鈴木 亜久里※「スーパーアグリ」から「アムリンアグリ」へとチーム名は変わったが・・・
【EV(電気自動車)最前線】
@DIME から
元F1ドライバー・鈴木亜久里「僕がフォーミュラE参戦を決めた理由」
鈴木亜久里氏が2014年9月から始まる電気自動車のフォーミュラレース選手権「フォーミュラE」に自身の名前を冠したチームを参戦する。
彼をそうさせたのは、新しモノ好きの血が騒いだのと同時に、レースが果たす技術進化に対する確固たる信念によるものだった。
「F1時代(06年から08年)の仲間、マークとピーターから“一緒にやらないか?”と連絡をもらったのが事の始まりだね」
「フォーミュラE」参戦を決めたきっかけは仲間からの誘いだった。
スーパーアグリフォーミュラワンチームのチーフエンジニアだったマーク・プレストンとエンジニアのピーター・マクールがチームを結成。
亜久里氏はチームの“顔”のような役割を担うことになる。
「2人には“僕ができることだったら何でも手伝う”と約束した」
具体的にいうと、スポンサーを集めたり自動車メーカーとのコラボレーションを手伝ったりするといったことだ。
F1時代と違って、今回はあくまでもサポート役に徹すると話す亜久里氏。
全く新しいカテゴリーへのチャレンジを決断した本当の理由を聞いてみた。
「これからのクルマは必ず電気がエネルギー源になる。だったら、それでレースをしてみたいよね。将来それが“究極のEV”といわれる燃料電池車になったとしても、バッテリーとモーターがクルマを動かすのに変わりはないから」
チームオーナーとしての決断という前にひとりのクルマ好き、ひとりの人間として興味が彼を突き動かしたということだ。
新しいモノ好きの彼らしい一面だといえる。
レースは走る実験室”甦るホンダのコンセプト亜久里氏によると、実はほかにもうひとつ深い動機があるという。
「60年代にホンダが初めて、F1グランプリにチャレンジした時のコンセプトが“レースは走る実験室”だった。技術はレースで戦うことによって鍛えられ、磨かれていくものなんだ。それもスピーディーに。結果的に戦うことが技術革新を加速させるからね」
過去のクルマの歴史を遡れば、“そんなの非現実的だ”とか“絶対に無理”とかいわれたものが、F1をはじめとするレーシングカーの開発によって実現し、あっという間に普及する。
技術の進化=レースの歴史だったのだ。
「本田宗一郎さんがレースに積極的だったのは、それなんだよね」これから間違いなく僕らが想像できないことが起こるしかしホンダが“走る実験室”を標榜していた60年代後半と現在とでは時代と技術が様変わりした。
「今はもう、レースの世界から乗用車に応用できる新しい技術が生まれていない。レーシングカーの技術と乗用車の技術の進化の系統が分かれてしまったから。でも、電気自動車の技術はこれから発展する分野だから挑戦してみたくなった。例えば、バッテリーメーカーと一緒になって開発したレース用バッテリーが1回の充電で1000km走れたら、そのまま一般のEVに応用できるかもしれない。それは、モーターや制御技術、回生技術だって同じこと。間違いなく今の僕らには想像できないことが起こると思う。そういう時代が近づいていると肌で感じている」
ひそかに注目している技術は「シリコンセパレーター」「フォーミュラE」の初年度は、マシンもパワートレインも各チーム共通のものを使うことになっている。
しかし、2年目はパワートレインを、3年目はマシンもパワートレインの両方を自力で開発しなければならないという。
「3年目から、いよいよガチンコの勝負になってくるんだろうね」ここから各国の自動車メーカーとEV関連メーカーの総力戦となるというのが亜久里氏の見立てだ。
亜久里氏によると、今、ひそかに注目している技術があるという。
それが信越化学のシリコンセパレーターだ。
これはすでに発表されている技術で非常に高価だが、それを用いると航続距離が5倍から10倍に伸びるというのだ。
「いくら高かろうとレースでは関係ない。僕がやっていた時のF1のエンジンだって1基6000万円もしていたしね。だから1台分のバッテリー代で3000万円を請求されても驚かない。それで勝てるんだったら安いものだから」
9月13日、亜久里氏が指揮を執る北京での開幕戦が待ち遠しい。
「技術はレースで戦うことによって鍛えられ、磨かれていくもの」
PR