2ndシーズンの開幕戦、北京大会では新しい変更になったルールの影響を垣間見ることができた。
今シーズンからモーター、ギアボックス、インバーターなどのパワートレインが自由化、リアサスペンションも改良が可能となった。
ドニントンパークでプレシーズン公式テストを行っているが、従来型のスムースで速いサーキットでのテストから、フォーミュラE選手権が開催される市街地サーキットでどうなるか読むのは難しい。
ギア最も大きな変化はギアだ。
それぞれのチームは独自のギア戦略で走っている。
いくつかのチームはオリジナルのシングルモーターに5ギア。
一方、ツインモーターにシングルギアという組み合わせの全く逆のチームもある。
またその中間の安全策と見える戦略を取ったところもある。
北京大会から何が読み取れるだろうか。
ネクストEV TCR:1ギア、ツインモーター
DSヴァージンレーシング:1ギア、ツインモーター
ルノー e.ダムス:2ギア、シングルモーター(以下のチーム、全てシングルモーター)
ABTシェフラー アウディスポーツ:3ギア
ドラゴン レーシング & ヴェンチュリー:4ギア
トゥルーリ:4ギア
マヒンドラ レーシング:4ギア
チームアグリ:5ギア
アンドレッティ:5ギア
ドライバーがシフトをアップダウンする度に、数ミリ秒の電力低下が起こり、一瞬の途切れが起こる。
バッテリーの回生も止まるので、これは効率的ではない。
では、少ない数のギアが最も効率的なのだろうか?
100%のトルクを出すのにシングルギアで十分なので、市販電気自動車は大体ギアがない。
しかし、レース環境では状況は少し異なる。
特にギアのない状態でスタートした場合、クルマが最適トルクを得られない可能性がある。
ではどのようにレース中に効率性を最大限にするのか、またスタート時どのように加速性を最大限に維持するのか、北京大会の結果から解き明かしてみよう。
<ルノー e.ダムス>
ブエミは目を見張るパフォーマンスで、ポールポジション、ファステストラップ、レース勝利と、選手権初のハットトリックを決め、そして2位のグラッシに対して11秒の差をつけゴールした。
ルノーは、選手権に勝てるクルマでブエミとプロストを参戦させていることを証明した。
なぜ、他のチームより速いのだろうか?
・ギアセットアップはスターターギアと、レース中のシングルギアの2つ。シフトチェンジ時に起こる非効率性を最小限に抑え、スタート時のパワーを最大限にした。
・車両が軽い。規定最小重量の888kgに達したのはABTシェフラー アウディスポーツとルノー e.ダムスだけだ。ヴェンチュリー、ドラゴンレーシングは、規定より少し重量がある。DSヴァージンは最も重い車両の1つで、ネクストEVもダイエットが必要だ。では、ルノー e.ダムスはどのようにしてこの軽量ボディーを造ったのか?彼らはカーボン・ファイバーのギアボックス・ケースを開発した。
・ルノーは人材、資金をクルマとテクノロジーにかなり投資しており、その額は10億円以上という噂が流れている。また、ルノーで10年以上電子電気系プロジェクトを引っ張っているヴィンセント・ガイラードットがマシンの後ろにいる。彼はF1やフォーミュラEの1stシーズンのパートナーシッププロジェクトでも関わっている。
<ネクストEV TCR>
ネクストEVは、シングルギアとツインモーターの組み合わせだ(DSヴァージン レーシングも同様)。シングルギアは、ギアチェンジ時の非効率性を軽減するが、ツインモーターはより大きく、重い。特にネクストEVの物はそうで、約30kgから50kgは重いと言われている(未確認)。これがシャシーバランスに影響しているのだろう。フォーミュラEカーはすでに後方に61%の重量がかかっており、加えてこの重さがかかると、クルマの効率性や競争力に影響があるだろう。そして、それが結果に出ている。オリバー・ターベイは6位だったが、それはフルコースイエローが出たおかげだ。ネルソン・ピケJr.は悲惨な週末だった。スロットルセンサーの不具合によるものと言われているが、フリー走行中にピット出口でクラッシュ、それからレース中にはトラックで停止してしまった。チームはまだ多くの仕事を抱えている。
<ABTシェフラー アウディスポーツ>
3ギアでシングルモーターというのは中間の組み合わせと言え、効果をもたらしている。ルーカス・ディ・グラッシは予選で十分なペースを見せ、スーパーポールセッションに進出、グリッド3からのレースとなった。また十分なパワーと効率性を示し、結果は2位、表彰台を持ち帰った。車両の軽いチームの1つであるABTシェフラー アウディスポーツの調子はいいようだ。ソフトウェアや戦略が更に改善されれば効率的にルノーと戦っていけるだろう。
<ヴェンチュリー & ドラゴン レーシング>
1stシーズンの素晴らしい終わりの後、ドラゴンレーシングは残念ながら北京大会では表彰台は逃したが4位5位を獲得し、2ndシーズンも手堅くスタートした。トップチームとして戦えるペースを見せている。ドラゴンはヴェンチュリーのパワートレインを購入した最初の顧客チームだが、同じパワートレインを積むヴェンチュリーのステファン・サラザンは9位だった。この2チームは、ハードは同じだがソフトや戦略は違う。素晴らしいエネルギー管理能力を見せており、ジェイ・ペンスキー(ドラゴン レーシング・オーナー)によると、チーム自体の変更はほとんどなく、中心メンバーは同じだと言う。そしてチームメイト同士のデュバルとダンブロシオはいい感じの接戦を見せている。
<マヒンドラ レーシング>
マヒンドラ レーシングのオーナーはインドの大手自動車会社マヒンドラで、26か国に電気自動車を供給しているマヒンドラRevaエレクトリック・ヴィヒクル社も傘下にある。レースチームはカンポス・レーシング(ドライバーチャンピオンになったネクストEVと同じ)が運営しているので、強いチームに違いない。ヒューランドの4ギアとマクラーレンのモーターの組み合わせ(1stシーズンと非常に似ているパワートレイン)を装備しており、ひと夏かけ必死にソフトウェアを開発した。その結果、北京大会ではニック・ハイドフェルドの素晴らしいパフォーマンスによりチーム初の表彰台を獲得することができた。ハードは1stシーズンの改良版だが勝利の鍵となるのはマクラーレンとのソフト開発に投資した努力のようだ。
何が起こるか分からないフォーミュラEのレースだが、高いクオリティのレースが人気となっている。
チームとドライバーが懸命な努力を続けなければならないプレッシャーとなり、誰が2ndシーズンを制するかと、ファンにも目を離す隙を与えない。
テレビ朝日公式サイトから
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