F1と同じFIA(国際自動車連盟)が管轄し、電気エネルギーだけを動力源とするフォーミュラカーで競う、まったく新しいチャンピオンシップ『FIAフォーミュラE選手権』。
この第4戦となるブエノスアイレス大会を、1月10日(土)テレビ朝日の三波で独占生中継を行う。
この放送を前にして、元F1ドライバーの片山右京氏が、見どころなどを語った。
『FIAフォーミュラE選手権』は、9月13日、中国・北京で記念すべき開幕戦が開催されて以来、第2戦マレーシア大会、第3戦ウルグアイ大会と行われ、電気エネルギーのペース配分が勝敗を分ける高い戦略性と、全コース市街地レースならではの激しいバトルやクラッシュなど、スリリングなレースが展開されてきた。
さらに、レース前のファン投票で上位3位に入ったドライバーに与えられる一時的なパワーアップシステム=ファンブーストもフォーミュラEの大きな魅力の一つとなっており、上手く活用すれば大逆転も可能な、まさにフォーミュラEならではの新しいシステムとして注目を集めている。
そんな新たな魅力満載のフォーミュラEは、開幕から3戦を終え、いよいよ中盤戦に突入!
そこで、フォーミュラE中継で解説を担当している元F1ドライバーの片山右京氏が、これから始まる第4戦を前に、直近の第3戦のレースの感想を含めて、第4戦のブエノスアイレス大会の見どころ、今後の展望などを語った。以下、コメントを全て紹介する。
第3戦を振り返ってポールポジション(決勝のスタート位置の先頭)を取ったジャン-エリック・ベルニュ(アンドレッティ フォーミュラE)が、いきなり初参戦・初ポールということで、その勢いのまま初優勝も期待されたが、まさかのアクシデントでリタイアとなり、フォーミュラEの難しさ、奥深さを感じる結果になりました。
同じバッテリーを使用しているので、ファンブーストの使い方を間違えると、すぐにリタイアになるリスクがあり、速さだけでは駄目だということが3戦目にして改めて分かりました。
そんななか、チャンピオンシップを争っているサム・バード(ヴァージン レーシング)が、予選・決勝とアクシデントにあってチャンピオンシップから後退する一方で、ルーカス・ディ・グラッシ(アウディ スポーツ ABT)が、3戦連続で表彰台に上り他を圧倒する安定感を見せています。
安定感が今後もフォーミュラEの重要なポイントになってくる?ゴールに着かないと結果としては全く残らないので、限られたバッテリー容量のなかで、エネルギースケジュールを崩さないで走り続けることが重要です。
ファンブーストは、オーバーテイクするための新しい武器ではあるけれども、本当にそれを使える状況というのをちゃんと把握していなければいけません。
(レースの)マネジメントというのが単純ではないということが、見ている方からもはっきりと分かります。
ベルニュなどは、今回のレースで沢山のことを学んだと思いますし、速さは間違いなくあるということが証明できましたから、今後のトップ争いが楽しみですね。
また、速さだけではなく安定感が必要だということは確かなんですけれども、やっぱりエンジンではなくモーターであっても、速さというのは重要で、まずポールポジションを取ることが非常に重要です。
ポールポジションを取れれば、前を走ることによって落ち着いてペースコントロールできるので、バッテリーをセーブすることで戦い方に幅が出ます。
そのあたりは、回数を重ねることによって、ベルニュにしても落ち着きを取り戻せば、今回でも後ろからネルソン・ピケJr. (チャイナレーシング)とかを抜いた後も、そこで無理をしなければ、本当だったら一周早くピットに入って、2台目のマシンのバッテリーが苦しい状況でももったのかなという気もします。
第4戦のポイントは?最初は全員手探りでやっていましたが、徐々にチームの基本的なベースとなるレースペースが出来てきたなかで、ドライバーはそのペースに合わせてブレーキングしながら、レースを展開していたと思います。
今後は、ドライバーによる勝つための戦略的なマネジメントが重要になります。
各選手が試合を振り返ってデータを解析していきながら、レースがどんどん洗練されていって、ドライビングもブラッシュアップされて戦い方も出来上がってくるので、より高度でレベルの高い戦いになっていくと思います。
第4戦のコースのポイントは?フォーミュラEは全戦市街地で行われるのがひとつの大きな特徴ですが、第4戦のブエノスアイレスのサーキットは、第1コーナーのヘアピンカーブから、第2コーナーにかけての細かな複合コーナーなど、一般的なサーキットに近い印象です。
公道を使った市街地レースでは直角のレイアウトが多くなると思いますが、そんななかでは通常のサーキットに近いコーナーがあったり、それからコースの幅が4車線もあるので、その分ライン取りが大きくなることで、普通なら中速コーナーのところが高速コーナーに変わったりということで、今までと違うレース展開になると思うので楽しみですね。
1月の南米での開催は平均気温25度と、絶好のコンディションといえると思うが?アジアを離れ南米シリーズということで、とにかく気候は一番良い時期ですので、雨などの心配はなく荒れたレースにはならないと思います。
ただ今回のレースでもそうでしたが意外と湿度が高かったり、ちょっと自分たちの予想と違うところもあるので、そのあたりがドライバーに与える影響は大きいと思います。
注目のドライバーは?シーズンが進むにつれて大きな目標はチャンピオンシップ争いになっていくので、ディ・グラッシを中心に、第3戦で上位に入ったネルソン・ピケJr、今回はリタイアに終わったサム・バードが今後どう修正して上位争いに絡んでくるかが注目です。
またベルニュのように、シーズン途中参戦してきていきなり速さを見せつけたドライバーもいますから、そういう新たなドライバーがどういう結果を出していくかにも注目したいですね。
第3戦まで終了したが、当初のイメージと違ったことは?限られたバッテリーのなかで争うエコレースかと思っていたので、これほど激しいバトルになるとは思っていませんでした。
もっとエコ優先で、エネルギーをセーブする方向に行くかと思ったけれども、すぐに各チームがデータを解析してある程度レースのペースが作られているので、そこからもう一歩進んで、セーブしながらも、何度もセーフティカーが入ったり、クラッシュがあったり、アクシデントがあったりと想像以上に激しいバトルが展開されています。
ここまでの3戦を振り返って、印象に残っているシーンは?やはり開幕戦の最終ラップ・最終コーナーのニコラス・プロスト(e.ダムス ルノー)とニック・ハイドフェルド(ヴェンチュリー)のクラッシュが挙げられるけれども、それ以外でも第2戦のサム・バードの完璧な勝利や、第3戦のベルニュの突然のストップなども印象的です。
フォーミュラEというものをみんなが学びながらやっている段階なので、まだまだ何が起きるか分からない、そういう意味では、本当に新しい未来のモータースポーツだということを感じますね。
提供:テレビドガッチ
PR