フォーミュラE国際放送実況ジャック・ニコールズが、フォーミュラEを振り返る
テレビ朝日公式サイトから
昨シーズンのシーズンフィナーレであるロンドン大会に入る前、ドライバーズランキングはネルソン・ピケJr.(128p)、ルーカス・ディ・グラッシ(111p)、セバスチャン・ブエミ(105p)という状態で、初シーズンのチャンピオン争いの行方が注目された。
そして最終戦の最終コーナーまでその行方は分からず、わずか1ポイント差でネルソン・ピケJr.がセバスチャン・ブエミを抑えチャンピオンに輝いた。
あの光景は間違いなく、フォーミュラEが最高レベルのスポーツであることを見せつけた。
そして3か月後、2ndシーズン開幕戦北京大会が開催された。
セバスチャン・ブエミとルノーe.ダムスの圧倒的なレース支配を見て、その時に今シーズンはあのロンドン大会は繰り返されない、と思った。が、それは誤りだった!
ルノーチームの爆走、中国での圧勝について多くのことが書かれた。
そしてそれは、2009年F1のジェイソン・バトンとブラウンチームのように、他のクルマが追いつく前にシーズンスタートで最高のクルマを保持する利点を有活用する必要があったのだった。
ブエミのミスが足を引っ張った。
多くのプレッシャーが彼にかかり、特に予選で彼は大きなエラーを何度かした。
チーム自体も完璧からは遠かった。
昨シーズン、チームは第9戦モスクワ大会で大きなミスを犯した。
ピットストップタイムの勘違いから9秒もロスしたのだ。
加えて、安全ではない状態でピットからリリースしたことで、タイムペナルティ29秒が加算された。
それにより第8戦ベルリン大会後トップのピケJrと2ポイント差まで迫っていたが第9戦モスクワ大会後その差は23ポイントに広がり、タイトル勝利のポジションから落ちてしまったと言える。
このことが今シーズンのチャンピオン争いをより魅力的にしている。
ブエミは初シーズン前のテストでチャンピオンに最も近いと言われたが、1ポイント差で逃した。
そして今、北京大会以来、有力チャンピオン候補と言われていたが、フィナーレのロンドン大会前で、1位のルーカス・ディ・グラッシの1ポイント後ろにつけている状態だ。
3rdシーズンもブエミはルノーと契約しているが、タイトルを獲得できなかった場合、チームとブエミ自身に大きな疑問符が残るだろう。
ブエミのペースが不安定だった一方、ルーカス・ディ・グラッシは安定した強さをみせている。
ディ・グラッシはフォーミュラEのこれまでの19戦で、まだポールポジションを獲得したことがないが、14度表彰台に上がっている。
このうち2度はテクニカル問題で失格となってしまっているが、ドライバーとしての安定度は驚異的だ。
間違えていなければ、この19レース中、壁にクラッシュしたのも2度だけだ。
そのうち1度はディ・グラッシのせいではない。
1stシーズンのブエノスアイレス大会で、サスペンションの故障で壁にクラッシュした。
1stシーズンのプトラジャヤ大会予選でのクラッシュが、唯一自身が起こしたクラッシュのはずだ。
ということで2ndシーズンのフォーミュラE選手権チャンピオンがもうすぐ決まるわけだが、モータースポーツでの昔からのジレンマである、スピード対一貫性。ウサギとカメ。
これらは恐らくディ・グラッシへの若干の攻撃でもある。
先週、バタシーパークのサーキットを一周走ってみた。
公園内は犬の散歩をする人やサッカーをする子供たちでいっぱいだった。
1か月以内にフォーミュラEのフィナーレを開催するとは信じ固い光景だった。