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片山右京が語る、フォーミュラEの見所

片山右京、フォーミュラE
as-webから

今年から開催されているフォーミュラE選手権。
初のEVフォーミュラによる選手権ということで、大きな注目を集めている。
ここまで2戦が行われ、アウディ・スポーツ・アプトのルーカス・ディ・グラッシが開幕戦優勝+第2戦2位、ヴァージン・レーシングのサム・バードが開幕戦3位+第2戦優勝と、好成績を収めている。
また、12月13日にはウルグアイで、第3戦が行われる。
ここまでの展開を、元F1ドライバーの片山右京はどのように見ているのか?
そして、来週末に行われる第3戦プンタ・デル・エステePrix(ウルグアイ)をどのように予想しているのか?

Q. 第2戦(プトラジャヤePrix)を振り返っての感想は?

「今回のレースの結果を見ると、ヴァージン・レーシングのサム・バードが圧勝で、彼の走りが光ったなというのが正直な感想です。ヤルノ・トゥルーリ(トゥルーリ)やダニエル・アプト(アウディ・スポーツ・アプト)が後ろを押さえてくれたという状況もあったと思いますが、すべての面でバードが完璧でした。強豪はアプトとルノーだけじゃないって感じましたね」

「タイムだけを比較すると他のチームも速かったけど、長く速く走り続けるのは難しい。エネルギースケジュールのマネジメント部分と、そのコースに合ったメカニカルなセッティングの両方を見つけなければ、タイムを出すどころか下手するとクラッシュにつながりかねない。それを初めてのサーキットで、しかも市街地コースで続けていく。綱渡り的な難しさがあると思います」

Q. クラッシュも多くて荒れ模様のレースでした。今後もこういうレースが続く?

「今年は避けて通れない、だから面白いと言ってはいけないんだけど(笑)。世界中の都市を回りながら市街地にサーキットを作っているのが、レースが荒れる大きな理由。(通常の)サーキットは何回か走ったことがあるところならすぐにイメージが湧くし、数周走ればセッティングのイメージが見えるんだけど、そうはいかない。初めての場所、実際に走ってみれば路面がこんなにバンピーな場所だとか、気温が予想以上に高いなど、リアルなハードルの高さを感じるし、その中で1日でパワースケジュール(バッテリーをどう持たせるか、という意味)を立てて、タイヤのセッティングを決めてレースをしなければならない、コースに適応しなければならないことを考えると、すべてのチームが完璧に出来るわけじゃない。チーム力+ドライバー力の勝負になってきます。当然だけどそこでバトルもあるわけだからアクシデントは避けては通れないですね」

「開幕戦はeダムス-ルノー、アウディ・スポーツ・アプトなど、フォーミュラEの開発に関わったチームが有利でした。ドライバースキルもF1経験者が結果を出していました。しかし2戦目にしてすぐにドラゴン・レーシングとかヴァージン・レーシングなど新規のチームが良いレース運びをしていました。この2戦で何をすればいいか分かったと思うから、第5、第6のチームが出てくるし、今年は同じマシンを使っている以上、タイム差が出にくいからバトルは激しくなるのが必然でしょうね」

Q. 第3戦の見どころ

「次のレースも激しい戦いが繰り広げられそうだけど、その中で何が一番大事かというと、まずはゴールにたどり着かないと絶対に勝利はない、結果は出ない、ということです。それが分かっているバードとかルーカス・ディ・グラッシ(アウディ・スポーツ・アプト)などが上位を奪い合っている。早くも一歩リードしていますよね。その点で言うと、ニコラス・プロスト(eダムス・ルノー)は開幕で勝っていたかもしれない(開幕戦トップを走りながらゴール直前でクラッシュ)とか、同じようなことがニック・ハイドフェルド(ヴェンチュリ/開幕戦でプロストとクラッシュ)にも言えますけど、まだ始まったばかりなので。まずはバード、ディ・グラッシのふたりが中心。ここに今後誰が食い込んでくるのか、楽しみですね」

Q. 第3戦は20のコーナーが存在するコース

「距離や周回数はあまり変わらないけど、今回は複合コーナー(ターン17〜19)がありますね。単純にパワーだけでなくクルマのバランス、雨などの天候、気温なども影響してくるでしょう」

Q. この時期、ウルグアイは平均気温が最低15度、最高26度くらいです。

「気候はそれほどマレーシアと変わらないのではないでしょうか。タイヤの発熱は問題ないと思います。湿度の方がドライバーへの影響が大きいですが、今回(第2戦)走れたので特に問題はないと思います。むしろ寒い方が影響を与えるのではないかな。フォーメーションラップがなくていきなりスタートすると、どうしてもタイヤのバランスが悪くなる。表面温度が上がっても内圧が上がらないのでコーナーで横Gがかかった時に辛い。(縦方向の)ブレーキは効くけど。今後の課題としてレギュレーションを含めてドライバーで意見を集めて運営サイドに言うべきではないか、と思います」

Q. 後輪を滑らせる走りについて

「普通のフォーミュラカーのレースではまずしないですね。車の向きを変えるために後輪を滑らせるというのは、タイヤの表面温度が高くなるので普通絶対に避けます。ただしコーナーが直角なコース特性と、これがフォーミュラEの最大の難しさでもあるのですが、モーターやバッテリー、ギヤボックスなどが全部後ろにあるから、とにかく後ろが重い。逆に前が軽いから曲がらないんです。だからどうしてもコーナーの入り口でブレーキングして(前輪に)荷重をかけて車の向きを変える。そこからモーターのトルクでパワーをかけて(後輪を)スライドさせながら出口を探すというような……ラリーに近いというか、公道特有の走り方を求められる車なんですよね」

「でも普通そういう走り方をスリックタイヤでやると、当然ながらタイヤがオーバーヒートしてしまい、“サーマルデグラデーション”という温度変化によるタイヤのグリップ力ダウンが大きくなってしまいます。ただ、フォーミュラEで使用しているグルーブドタイヤは、コンパウンドでいうと市販車のスポーツカー用タイヤに近い、熱の影響を受けにくいタイヤです。だから、乱暴に言えば、ラリーのようなラフな運転をしても大丈夫なんです。皆あえてそういう運転に切り替えているんです。そうせざるを得ないというのはこの車の面白いところですけど弱点でもありますよね」

「それが(後輪をアウトに)振りすぎてオーバーステアだとか、ブルーノ・セナ(マヒンドラ)みたいにファンブーストがあるから滑らせ過ぎて表面温度が上がってしまう選手もいました。その点、(優勝した)バードを見ているとターンインとパワーをかけるところ、トラクションがかかるところが本当に絶妙だった。弱アンダー(ステア)を残した状態からパワーをかけ、それ以上滑らせない、という走らせ方はカンペキでしたね」

Q. 走らせ方に関してはバードが一歩リード?

「他のドライバーもきっとレースを振り返ると思いますけど、おそらくみんな『あの(バードの)バランスが欲しいんだ』ってエンジニアに言っているはずですよ(笑)。車のロール感とか。公道がバンピーで乗り心地悪いからアウディなんかは足回りを柔らかくしたんでしょうけど、だからトラクションがかからなかった。たった1日しかないので修正できないけど、終わってから客観的に見ればすぐに分かる。それを持ち帰って次回にそういうセッティングをしてくる。エネルギースケジュールなんかはエンジニアが解析するはずです」

Q. ファンブーストで初めて抜いているシーンが流れましたね

「前回は機能しなかったので、第2戦が実質初めて。どのタイミングで使うかデータがなかったけど、1回目で抜ききれなかったセナが2回目でオーバーテイクするときに最終コーナーからちゃんとスリップ(ストリーム)に入ってファンブーストを使って、(オーバーテイク)するというね」

「ひとつ思ったのは、昔のF1のKERSとかDRSというほどの伝家の宝刀のようなパワーはないので、その分ちゃんとスピードを乗せてスリップ(ストリーム)に入らなければならない。抜く時も、アウト側からだと抜ききれなかったりしますから。それでもみんなどれくらい効くのか一度使えば分ってくる、すぐにみんな習得してくるでしょうけど」

Q. アムリン・アグリについて

「ちょっともったいなかった。キャサリン・レッグがスタートしてすぐにスピン、ファンブーストも乗り換えた2台目のマシンでは使っていましたが……。悪いところばかり目立ったけど、でもアントニオ・ダ・コスタなんかは、マカオF3で12年に優勝、13年2位、DTMでもBMWのワークスドライバーと実績のある良いレーサーです。すぐに修正して良いレースをしてくるはずですから、心配はしてないですけどね。ひとつ心配なのは、ちゃんとしたメーカーが持っているリソースみたいなものが無いこと。エンジニアがエネルギースケジュールを組んだりとか、車のセッティングをするという部分では、見ていて一抹の不安があるというか……。チームとして目立つことは大事なことではないんだけど、亜久里さんが自分でレースに出ちゃっても面白いんじゃないかな(笑)」

Q. 第3戦のコースの見どころ

「ウルグアイのコースは左回り。ターン3のシケインの角度にもよるけど、ターン5がオーバーテイクポイントになるかもしれませんね。(車の)バランスが悪ければターン13の高速コーナーで(路面が汚れていたりして)全開でいけないとなると、バランスが良い車がターン14のブレーキングでオーバーテイクができるかもしれない。最大の違いが出るのは、ターン17〜19の今までにない複合コーナー。スピード差がすごく出やすいから、ファンブーストがあるとかないとか関係なく、ブレーキングで並ぶ、ラインがクロスしてその次にインを押さえて前に出る……というようなオーバーテイクのできるポイントになると思いますよ」

    
    
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